本研究の目的は、高齢化社会にあって高齢者の住まいを内部に閉じずに、地域に開かれた存在としてのコミュニティとの同化を高め、老若混住の集住体のことを「コミュニティ・ハウジング」としてその必要性と可能性を明らかにすることにあった。 コミュニティ・ハウジングがこれからの集住体として意味を持つのは、それが多様な集住の生活の価値づくりをもたらすことである。住み手集団と共用環境の間の生き生きとした相互作用が、価値づくりをもたらすのである。そのことを具体的に実証するため、コミュニティ・ハウジングのひとつの型としての能動的な居住者参加のあるコーポラティブ・ハウジングの代表的事例としての「あじろぎ横丁」や「ユーコート」を対象にして、その共用空間の管理プロセスにひそむ課題・条件をすくい上げた。コミュニティ・センスは絶えず変動的であるが、満足すべきコミュニティを絶えず生成する重要な原因の1つは、共用環境を改善する過程にみられる多様な人間関係が発する集住の意味であることが明かとなった。 結論的にいえることは、コミュニティ・ハウジングを促す上での最重要条件は、創発的マネジメントである。それは共用空間(ハード)と集住(ソフト)の有機的相互作用のシステムである。そこにおいては多様な出来事や楽遊活動の連鎖の中に、創発的マネジメントの原理が介在し、価値生成のプロセスがみられることが明かとなった。 本研究全体のまとめとして、最後に、コミュニティ・ハウジングの成立のための計画要件10を抽出し、今後に向けての展望を示した。
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