研究概要 |
まず本研究費により平成2年度に液体急冷装置を1台購入した。それにより希土類系アモルファス合金を効率よく作製することが可能になった。平成3,4年度を通じ以下の研究を行った。 (1)LaーNiーAl,LaーNiーMg系アモルファス合金の電子物性、構造とその水素吸蔵効果の研究。 これらの系はその結晶金属間化合物が水素吸蔵合金として実用化されているが、表面酸化が激しくまた水素吸蔵によって微粉化するので、その表面状態や物性は研究が進んでいない。アモルファス合金では広範囲の組成で均一な合金が得られ、また水素吸蔵によってもバルク状試料が得られるので詳細な研究が可能である。XPSによる表面解析の結果LaーNiーAl系ではLaAlO_3,LaーNiーMg系ではMgOが表面偏析し水素の吸放出を阻害していることがわかった。この皮膜を除去すると水素の吸蔵が容易に起こり、その吸蔵能はH/M=1.0〜1.5となり結晶化合物を上回った。XPSによる深さ方向分析と、内殼及び価電子帯スペクトルの高分解能測定の結果、水素はLaとのみ化学結合し、しかもLa^+ーH^ーのようなイオン性の高い結合性を示すことが明きらかとなった。これは遷移金属系水素化物にはみられない顕著な特徴である。これらのアモルファス合金のX線構造解析を行うと、その動径分布関数にLaーLa,LaーNi,LaーAl相関ピ-クが認められた。またその構造は水素吸蔵により著しく変化した。これらのデ-タは現在解析を進めている。 (2)NdーFe,NdーFeーB系アモルファス合金の物性と水素吸蔵効果 これらの系は非晶質硬磁性材料として知られているが、その磁性の起源や電子状態及び水素吸蔵の影響についてはまだ十分解明されていない。そこでXPSによりそれらの電子状態分析を行った。NdーFe系では試料作製時に特に酸素による影響が強く現れた。またBはFeーB結合の結果Feの3dバンドを大きく変形させており両系の磁性の違いにも寄与していることがわかった。 以上の研究は日本金属学会や金属ー水素系に関する国際シンポジウムにおいて発表し、また論文としても掲載予定である。
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