研究概要 |
鋳造品の薄肉化の趨勢に沿って表面形成過程を理解するために溶融金属の流動場における凝固の挙動を観察・解析した. 1)薄肉鋳鉄における流動性 :前年度のアルミニウム合金と同様の減圧吸引試験法で片状黒鉛鋳鉄の流動性について研究し,鋳型断面寸法,鋳込温度,吸引圧力の影響,鋳鉄特有の現象として接種の影響,流動に伴う場所による凝固組織の差の発生などを明らかにした.つまり鋳鉄では単に鋳型を充填するだけでなく,とくに流れ先端部に炭化物が発生しないような組成上または溶湯温度などの処置が必要である。 2)薄肉チタン鋳物における流動性 :精密鋳造鋳型におけるチタン鋳物の流動性を調べ,鋳込温度,鋳型断面寸法の影響を明らかにした.またモデル材料としての鋼について,狭い鋳型空間での流動性が脱酸で改善されることを見出し,チタンなどへの応用の可能性が示唆された. 3)強制対流下における凝固のコンピュ-タ・シミュレ-ション :実験研究と平行して,2次元平面での流動と凝固についてのナビアスト-クスの式とエネルギ保存式によりコンピュ-タ・シミュレ-ションを試みた.凝固層の成長速度は溶湯の温度と流速の関数になることが示され,このことは純水・氷の実験での直接観察で確認された. 4)液滴落下法による表面凝固層の変形挙動の研究 :前年度の研究方法を改良して液滴落下法を確立し,底面の凝固そり量の測定により種々の純金属および2元合金の初期凝固層の変形挙動を調べた.純金属の変形に凝固収縮量の影響は全くなく,凝固後の変形だけであることがわかった.合金については共晶組成付近で大きい正変形または負変形が起こることを見いだし,その原因はやはり凝固後の収縮又は膨張にあることを推論した.
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