研究概要 |
III族(Al,Ga,In)とV族(P,As,Sb)より成るZincblende型の化合物半導体は、LPE,VPE,MOCVD,MBEなど種々のエピタキシャル成長によって薄膜にされるが、基板とエピタキシャル層とに発生する格子歪が、薄膜の特性や安定性に大きな影響を与える。本研究では、エピタキシャル薄膜の相平衡について、整合歪を考慮した熱力学的解析を行った。解析に際しては、(i)液相は正則溶体近似、化合物相は副格子モデルによって自由エネルギ-を記述する; (ii)エピタキシャル成長した薄膜にミスフィット転位が入る臨界の厚さは、歪エネルギ-があるエネルギ-バリア-に達した時に生ずるとした。従って、歪エネルギ-は臨界膜厚までは一定であるが、それ以上では転位の導入により減少する。以上の前提のもとに相平衡の計算を行い、次の結果を得た。 (1)InP基板上に成長するGa(As,Sb)化合物: この系のバルク材は、広い組成範囲にわたって2相分離が存在するので、均一固溶体の成長は、GaAs側とGaSb側の非常に限られた組成範囲でのみ限定される。しかし、エピタキシャル成長では、InPがGa(As_<0.51>Sb_<0.49>)と整合するために、この組成近傍での成長が可能であり、約700℃付近では1μm程度までコヒ-レント成長できる。しかし、より低温での成長では均一固溶体は得られず2相分離する。 (2)GaP基板上に成長する(GaIn)P化合物: 膜厚が薄くなると、バルクの2相分離線のサミット温度が上昇し、基板に格子整合する安定な組成とひずみエネルギ-の高い組成とに2相分離する傾向がある。 (3)以上の解析をII族(Zn,Cd,Hg)とV族(S,Se,Te)の化合物半導体へも適用出来る様に、バルク材の2相分離の熱力学的解析を行った。
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