研究概要 |
平成3年度においては、当初の計画に従い、顕著な脆性のために開発の遅れている光端高温材料の一つであるNi_3Al,および先端磁性材料の一つであるFeー50%Co合金の二種類の規則合金・金属間化合物に対して粒界設計制御に基づく脆性材料の強靭化の研究が行なわれた。その結果、次のような重要な知見が得られた。 (1)従来、ボロン(B)を添加せずには常温延性が得られないと一般に認識されてきたNi_3Alにおいて、帯溶融法を用いた一方向凝固によりボロン(B)を添加せずに50%以上の常温延性が得られ,これが粒界破壊に対して抵抗の大きい低エネルギ-粒界、とくに低角度粒界が高頻度に導入されることによることが粒界性格分布の調査によって明らかにされた。さらにこの高頻度の低エネルギ-粒界の存在は1300℃の高温度においても安定であることが確かめられた。また、常温延性の一方向凝固試料でも加工熱処理すると延性が失われ、それが粒界破壊に対して抵抗の小さい高エネルギ-・ランダム粒界の存在によることも明らかにされた。本研究により、粒界性格分布の制御を行うことによりボロン(B)と添加せずに延性および熱的安定性の高い,一方向凝固Ni_3Al多結晶材料の開発が可能であることが明らかにされた。 (2)初年度に購入し本年度に完成した磁場中焼鈍装置を用いて,B2型の規則合金であるFeー50mol%Co合金の急冷凝固薄帯試料を,15Kocの磁場中で規則一不規則変態温度の上下の温度の下で焼鈍を行い,それらの試料の粒界性格分布の調査を行った。その結果,磁場作用により粒成長が抑制されること,また粒界方位差5゚以下の低角度粒界の存在頻度が高められることが明らかにされた。磁場中焼鈍が強磁・規則一不規則合金の粒成長および粒界性格分布の制御に有効であることが明らかにされた。
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