研究概要 |
当初研究計画に対応させて,平成2年度に得られた研究結果を以下に示す. [1.ベイナイトの組織学的・結晶学的特徴と界面構造] Feー2%Siー0.6%CおよびFeー2%Siー1%Mnー0.6%C合金を高周波真空溶解により作製した.これらの試料を用いてTTT線図の作製,光顕による恒温変態組織の観察およびX線解析による室温での残留オ-ステナイト(γ)量の測定を行った.その結果,両合金とも823K〜673Kの温度範囲で上部ベイナイト組織が得られることが確認された.また,723Kでのベイナイト変態途中で急冷した試片には室温にて残留γが存在し,その量はMn添加合金の方が多いことが明らかとなった.現在は,電顕用薄膜作製時の最適電解研磨条件の検討等を終え,電顕観察に着手している. [2.FeーNiーC合金のベイナイト変態の速度論的特徴] 種々の組成のFeーNiーC合金を高周波真空溶解により作製し,TTT線図の作製および光顕,SEM,TEMによる組織観察を行った.その結果,Feー9%Niー0.1%C,Feー9%Niー0.2%C,およびFeー11%Niー0.2%C合金のTTT線図は1つのC曲線とはならず,フェライト+パ-ライト変態とベイナイト変態のそれぞれに対応する2つのC曲線で構成されることを明らかにした.これは,炭化物生成元素を含まない合金でも2重C曲線となることを初めて明瞭に示したもので,ベイナイト変態の機構が,フェライト+パ-ライト変態とは異なる,せん断型であることを強く示唆するものである.さらに,ベイナイトの生成上限温度(Bs点)が,試料の組成から炭素を除いたFeーNi合金のMs点と対応することを見いだした.
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