研究概要 |
共役二重結合を骨格に持つ導電性高分子は,電気化学的に酸化・還元することによって,その電導度を絶緑体から金属領域まで10桁以上任意に変えることができる。この性質を利用して可塑性電導体,既ち書き換え可能なメモリ素子を試作し,その入力応答や安定性等に関する多くの知見を得た。 メモリ素子の構造は電界効果トランジスタと同様とし,距離10ミクロン巾0.5ミリのソ-スとドレイン間に導電性高分子ポリ3メチルチオフェンを電解重合することによってチャンネルを形成した。その上部にエチレオキシドとプロピレンオキシドの共重合体に電解質として約0.1モル濃度の過塩素酸リチウムを含有させた高分子固体電解質を塗付し,その上部に書き込み用電極を配した構造とした。従来,電気化学反応は電解質溶液を用いていたのでエレクトロニクス素子として利用するには限果があった。従って,この素子は電気化学反応を利用したデバイスを固体電解質を用いることによって,微細加工が可能となり信頼性を向上しエレクトロニクス素子として応用できる可能性を開くものである。 上述の素子に書き込み電極に加える入力信号をドレインに対してー5ボルトを数秒印加すると,チャンネルの抵抗は100キロオ-ムから数十オ-ムに減少した。さらに入力を接地すると抵抗はほぼ元の値に戻り,また入力を開放するとチャンネル抵抗は保持された。書き込みにパルス信号を加えると,パルスの頻度,およびその大きさにより依存してチャンネルの抵抗が変化することが確認できた。この素子試作と特性評価によって得られた知見は応用物理学会欧文誌に掲載され,更に次年度の計画である特性改善に向け研究を推進する基盤となった。
|