研究概要 |
擬一次元の半導体である導電性高分子は,高分子鎖間に酸化・還元剤を電気的にかつ可逆的にド-プ,脱ド-プをすることが可能で電導度を半導体から金属域まで任意に制御することが可能である.この性質を利用して可塑性メモリ素子を作成しその入力応答やメモリ特性を測定してきた. メモリ素子は入力信号をメモリチャンネルに電導率の変化として記憶させる3端子素子と,入力信号がそのまま素子の電導度を変化させる2端子素子を作成した.前者は昨年度に引き続き,本年度は信号の周波数依存性,素子の温度依存性について研究を行った.後者は新たに今年度の研究に加えた.2端子素子はメモリチャンネルとして3メチルオフェンを電解重合することによって形成し,金蒸着により電極を付け,その上部にエチレオキシドとプロピレンオキシドの共重合体に電解質として約0.1モル濃度の過塩素酸リチウムを含有させた高分子固体電解質を塗付した構造とした. 3端子素子では入力信号としてパルス幅,パルス頻度,パルス電圧等を変化させた時のメモリ応答を測定し,評価を行った.メモリチャンネルの電導性はそれらに応じた変化を示し,書き込みおよび消去特性さらにメモリ機能を備えていることが判った.2端子素子では電極両端に印加する電圧によって,素子の抵抗値が変化し,更に印加する信号の回数によってその変化の割合が速くなる学習機能を備えていることも判った.電流電圧特性は非線形を示し,抵抗値の変化として記憶された状態は逆バイアス電圧の印加によって消去されることも判った.一般に2端子素子では両端に電圧を印加しても抵抗値は変化しない.この素子の動作はチャンネルの上に塗付した固体電解質中のイオンが導電性高分子にド-プされ電導度が変化する新しい原理の素子である. これらの素子の特性は,次世代のコンピュ-タのニュ-ロ素子としての新規な可能性を示すものであり,これらの成果は学術会議での口頭発表および雑誌に発表した.
|