1.前年度の実績報告書で、モワレ縞振動の不均一な振幅分布はモワレ模様中の縞コントラストの明瞭さの分布との間によい相関を示し、縞コントラスト 大(小)←→縞振動 小(大)の対応関係があることを述べた。今年度の交付申請書では、現有データの十分な解析と補足実験によりこの知見の正確さを確かめることを研究目的の第一に挙げた。現在までの検討によりこの目標は達成した。但し、補足実験の余裕が無く行っていない。上記の知見は実験と現行理論との間に接点が1つ得られたことを意味する。理論に基づいて縞コントラストの変化を研究することが縞振動(非投影性)の原因解明の端緒にもなることを期待してよい。 2.解析作業の進展にしたがってさらにいくつかの知見が得られつつある。その主なものを以下に記す。 (1)縞振動の振幅は、結晶内波動場の位相に関係するとともに、トポグラフの(場所的)平均の像強度や平均の縞コントラストとも相関し、像強度 大(小)←→縞振動 小(大)の対応関係があるように思われる。このことは透過波像と回析波像を比較することにより分かる。どの縞模様の場合にも、2つの像間には容易に分る程度の像強度差がある。 (2)試料状態が同じ(傾角回転の荷重Lが同じ)で、非同時に撮影した異なるトポグラフセットのT1トポグラフ(最前置トポグラフ)同士でモワレ縞プロファイルを比較し、一般にプロファイルは一致しないことを確認した。この事実は、同時撮影のトポグラフセット間に見られる縞プロファイルの変化(非投影性)がフィルムという吸収体によってはじめて惹起されたものではなく、真空中で、その前方から起こっていたという考えを支持する。さらに付言すれば、比較するT1トポグラフの結晶ーフィルム間距離Zaが同じ場合、縞プロファイルは小振幅領域では大体一致するが、大振幅領域では全く一致しない。
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