研究概要 |
本年度は、主要な設備備品として、高安定・高分解能な水素検出用X線回折装置一式を購入した。現在、装置の立ち上げを終了し、リン酸二水素カリウム中の水素結合の様子を調べるためにX線回折実験を行っている。装置の立ち上げと平行して、解析方法を確立するために,マキシマムエントロピ-法によりルチル(TiO_2)の解析を行った。それにより,電子レベルの構造としては,(001)および(002)面上でTiO_2を単位とする結合をして居り,さらに,それらが面間のTiとOとの結合により3次元的ネットワ-ク構造を形成することを明らかにした。この結果は、現在結晶学に関しては,最も国際的に権威のあるActa Crystallographica誌に投稿中である。口頭発表としては,日本物理学会あるいは日本結晶学会における数編の一般講演に加え,日本物理学会1990年度秋の分科会において“マキシマムエントロピ-法によって求めた電子密度分布について"と言う題のもとに特別講演を行った。国際会議における発表は,フランスのボルド-で開催された第15回国際結晶学会において2編の論文発表を行った。さらに,同会議のサテライトミ-ティングとして開かれたPowder Diffractionの会議において“Accurate electron density distribution from Xーray powder diffraction datu by use of the maximum entrwpy method"と題した招待講演を行った。これらの研究活動により本研究が国際的にも注目されていることが理解されよう。これら既報の研究に加え,最近氷の構造解析を終了した。氷は水素結合をしている典型的な物質の一つであり,これまでの方法により非常に詳しく研究されている。しかし,マキシマムエントロピ-法による我々の研究は,それらの報果をはるかに凌ぐものであり,非常に興味のある結果が得られた。即ち,電子レベルの構造では,水素は局在した構造ではなく,完全に1つの分子軌道に取り込まれていることが判明した。氷の研究は,次年度も引き続き行なう。
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