研究概要 |
(1)、單繊維の異方性力学特性と被服材料の本質性能を決定する糸の曲げ特性,引張り特性,摩擦特性,交差糸の交差角変化に伴なう抵抗トルク特性との関係を理論的に明らかにし,実験によって確証した。さらに,糸のこれらの特性が布の基本力学特性ならびにそのヒステリシス特性に及ぼす影響について考察し、繊維特性と関連づけた。 (2)、單繊維の熱伝達特性の異方性を与えられた条件とし,糸及び布の繊維集合構造とから布の熱抵抗を理論的に誘導した。理論の妥当性を検証するために、予備的実験によって求めたPET,Wool,Cottonの單繊維の軸方向と、それと直交方向の熱伝導率を用いて理論計算した布の熱抵抗と実測値との関に良好な一致が得られ、單繊維の異方性熱伝達特性と衣服の温熱的快適性能を支配する布の熱移動特性との関係を見出した。 (3)單繊維の異方性力学特性が、紡績、製織工程中にどのように変化するかを明らかにするため、平均直径17,19,22mmのWool繊維について原毛から洗毛,洗色直後から最終の染色化上布に至るまでの10段階、さらに力学的に大きな負荷のかかるトップから双糸に紡績されるまでの工程8段階における繊維を各工程から採取して單繊維の異方性力学特性の変化挙動を実測した。その結果、繊維軸方向の彈性率はほとんど変化しないが、工程中で大きく延伸される工程では軸と直交方向の彈性率の低下がみられ、これらはスチ-ミング工程でほぼ初期値に回復すること、ねじり変形によるせん断彈性率はプロセスに従って下降し、スチ-ミング工程においても回復を示さず、繊維表面の損傷に基づくせん断彈性率の低下を表面処理剤による表皮の破壊試験によって 裏付けた。 (4)被服材料として繰返し着用、洗たくした布の疲労現象に及ぼす單繊維の異方性力学特性の影響についても(3)の成果と同傾向が認められ單繊維の疲労と被服材料の疲労との関係が促えられた。
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