研究概要 |
本研究代表者はすでに昭和63年9月より約2ヵ月間,中国の上海・復旦大学において現地研究者の協力をえて19世紀の洋務運動期の西欧科学技術の導入の問題について予備調査を行ってきたが,3ヵ月間の研究補助金が交付された第1年次の今年度は,中国清末の上海・江南製造局翻訳館の科学技術文献を中心とする翻訳事業の中心人物ジョン=フライヤ-が書いた文献(Translation of Foreign,Books,1880:カリフォルニア大学バ-クレィ校蔵),あるいはこの事業の全容を知る上で最も重要な『江南製造局記』などの収集を実施した。同時に18世紀を中心とするヨ-ロッパで出版それた原典のうちで,中国あるいは日本の近代科学導入の上で重要であった文献などの収集にも努めた。いずれも写真複写・マイクロフィルムによるものである。他方,近代化のなかの科学技術の受容過程というテ-マには,17,8世紀の動向がもっと明確にされる必要があり,そうした翻訳・編纂についての文献の収集にも努力したことはいうまでもない。 以上の資料収集作業とともに,この研究課題にとって必須の資料についての分析も並行的に開始した。こうした研究の結果については,最終的には第3年次において報告書を作成する予定であるが,初年度である今年次は,本研究代表者が英国科学振興協会第152回総会(90年8月)で行った講演にもとづく「17,8世紀の中国に与えたヨ-ロッパ科学のインパクト」(英文)、あるいは18世紀の清朝学者に与えたフランス数学の影響についての研究補助者C・ジャミ(フランスCNRS研究員)の成果についての書評(英文)などはもとより,この研究課題の開始にあたっては19世紀の中国近代化のなかの科学の知識の重要な位置についての評価を行い(和文),すでに公表したところであり,また政策と科学技術の意味についても著書(共著)を出版した。
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