研究概要 |
本研究課題の最終年度のあたる本年度は、第1年度および第2年度において明らかになった事実、すなわち西欧科学技術の導入の際には、その基礎となるべき科学技術の知識が重視され、その組織的導入のために上海・江南製造局が設立され、そこにおいて基礎的日文献が翻訳され刊行された。そうした科学技術文献の全般的検討を実行して明らかになった結果は、そうした文献のリストが19世紀後半の中国近代化の過程を忠実に反映しているという事実であった。 こうした結果にもとづき、科学技術文献を中心とする訳出事業を担った中心人物、ロンドン伝通協会所属のジョン=フライヤーが書いた『解説』(An Account of the Deparfinent of the Translation of Foreign Books,Shanghai,1880,カリフォルニア大学バークレー校図書館篇),すなわち『江南製造局翻訳館事業記』の全面検討を遂行することによってのみ、この事業の進行過程とその間の事業の情況が最も明確に説明されるという結論が得られ、まずその全分を翻訳し、それに注釈を加えるとともに、この事業の間に形行された文献の一覧表を作成して、最初に明らかになった仮説を実証し、それとともに、中国の科学技術の近代化にとって重要であるという諸問題についても、それまでの歴史的背景を中心にした論著によって補完するという作業を行なった。3年間にわたる本研究課題の最終年度の報告書として、別添の冊子にそれらの論著についても収録しておいた。本年度の研究作業については、そうしたとりまとめにかなりの時間と研究費が必要とされた。
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