ヒトの立位姿勢はきわめて不安定であり、その平衡は神経・筋の各種反射を含むフィ-ドバック回路により調節されており、これらの現象は身体動揺や身体重心(床反力作用点)動揺として観測される。また、ヒトの身体が頭部・体幹・下肢といった各セグメントとそれらを結ぶ関節とから成り立っているとする観点からすると、立位姿勢の平衡は各セグメントの位置関係の調節と見なすことができる。以上の点から、本研究では立位姿勢の保持機構の解析を行うために、以下に示す測定と結果の検討及び実験システムの構築を行った。 1.立位時における身体各部位の変位測定 立位時における身体各部位(頭部・肩・股関節・膝)4点の動揺を画像処理装置を用いて測定・分析を行うことが可能であった。さらに測定精度と分析方法の限界について検討を行った。 2.身体重心動揺の測定 立位時の身体重心(床反力作用点)動揺を測定するために、垂直方向圧力板、アンプリファイア、作用点位置演算装置のシステムを用い実験を行った。得られたデ-タは広帯域アナログ入力装置及び生体情報解析プログラムにより解析を行うことが有効であることを確認した。 3.総合実験システムの構築 1と2の測定について同時測定を行う実験システムを構築し、その有効性と測定方法の限界について検討を行った。 以上の点をふまえ、次年度はそれらの測定システムを用いて同時測定を行うための同期信号処理と得られたデ-タを処理するまでの所用時間の短縮を試みる。さらに実際に対象者に対し、種々の測定条件により同時測定を実施し、デ-タ分析を行った結果から、総合的に立位姿勢の保持機構の解析を行う予定である。
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