研究概要 |
從来のDーD核融合反応断面積のデ-タ-は重心系のエネルギ-で,6kev以上の高エネルギ-領域に限られており,これよりも低いエネルギ-領域の核融合反応率の評価は高エネルギ-領域から外挿された断面積の値を用いて行なわれている。最近,低エネルギ-領域のD( ^3He,p) ^4He反応の断面積が電子のしゃへい効果によって増大すること,および低温核融合においてはD(d,p)T反応が,D(d,n) ^3He反応よりも強く起こることが報告されている。これらの結果は,DーD核融合反応の断面積や分岐比が高エネルギ-領域からの外挿値と大きく異なる可能性があることを示唆している。我々は,これらの可能性の有無を明らかにするために,重心系のエネルギ-で,5keV以下の低エネルギ-領域における核融合反応断面積と分岐比の測定を目的とする研究を行った。 DーD核融合反応の反応率は重陽子エネルギ-の低下に伴い指数関数的に減少するので,核融合反応生成作を高い効率で計測する必要がある。そこで,TiDタ-ゲット薄膜(Ti/D=0、92,厚さ約200nm)の背後に半導体検出器を置き計数効率を高めた。この方法により,3.0MeVのp,1.0MeVのt及び0.8MeVの ^3Heを完全に分離して計数できることが確認され,各反応生成物の入射重陽子当りの収率測定を行なうことができた。現在迄に,入射重陽子のエネルギ-が10KeVから2、5KeV迄の範囲の測定結果が得られている。低エネルギ-領域の実験値は外挿による予想よりも10%ほど,大きい値であるが,pを生成する反応がnを生成する反応よりも増大する傾向は認められない。核融合反応断面積を求めるため,重陽子のTiDタ-ゲットに対する阻止能デ-タが必要であり,次年度は阻止能の測定を行なう予定である。
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