研究概要 |
1.研究目的:軽水炉の供用期間を十分な安全性・信頼性を保ちつつ延長することができるためには圧力容器の鋼材の照射脆化機構を明確化することが重要であるが、この様な基礎的研究は未だに十分に成されているとは言えない。本研究では、鋼材の中性子照射によって生ずるカスケ-ドから作られる格子欠陥の本性と、損傷速度の効果を明らかにすることを目的とする。 2.研究方法:(1)試料:実用鋼材としてはA533B鋼を中心として、これに脆化元素とされるP,Cu,Ni量を変化させた母材、及び溶接金属7鋼種、又機構解明を目的として純鉄、及びC、Cu、Niを変化させた鉄基合金12種の試料を準備した。これら鋼材から可能な限り無歪で薄板状の試片を切出し、直径3mm、厚さ〜0.25mmの試料を調製した。(2)照射:本年度は加速器による4MeV Niイオン照射を行った。即ち照射温度290℃で照射量は0.001^*,0.01^*,0.1,1,5dpa(*純鉄のみ)とした。尚、3.5MeVプロトン照射を行うためのチャンバ-の整備、特にビ-ム量を正確に計測するための20組のマイクロファデ-カップを有するビ-ムプロファイルモニタ-を購入した。又平成3年度以降材料試験炉JMTRによる中性子照射を申請し、そのための試料製作に着手した。 3.研究成果:(1)照射組織変化:純鉄、及びモデル合金の照射後組織をJEM200CX電子顕微鏡により調べた。照射により微細な欠陥クラスタ-が生成し、5dpaまでの範囲ではその密度・寸法ともに増加する。その照射量依存性は添加元素により影響をうけることがわかった。(2)照射硬化:荷重0.5gでイオン照射面のビッカ-ス硬さを測定したところ、銅の効果は高フルエンス側で次第に減少するのに対し、Niは硬化のNi濃度依存性が高照射量まで持続する。硬化量は電顕観察により見出されたクラスタ-密度、及び寸法と合理的に関係づけられることがわかった。
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