研究概要 |
本研究の目的は、第1壁における高粒子束負荷と同じ条件でイオン照射を受けている試料中の保持水素濃度分布(ダイナミック・リテンシヨン量)および照射後の加熱あるいはヘリウムイオン照射による試料中の保持水素濃度分布の変化を,イオンビ-ム分析法を用いて直接測定し,そのデ-タ解析から水素同位体の挙動を記述する質量平衡方程式中の物理パラメ-タを決定することである。 本年度は、まず主要申請設備である高輝度の差動排気型イオン銃を購入・設置した。4keVH^+_2イオンを散乱槽内の真空度1×10^<-7>トルで発生させた場合,約6×10^<15>/cm^2・sのHイオン束が得られ,本研究の遂行に有用であることを確認した。目下本装置を用いてダイナミック・リテンションの測定を行っている。これと平行して、黒鉛からの水素の再放出挙動および金属炭化物における水素の捕捉挙動を調べた。 3keVH^+_2あるいは2keVD^+_2イオンを1×10^<19>/cm^2注入した黒鉛からの1.5MeVHe^+イオン衝撃によるHあるいはDの再放出量の測定と解析からイオン衝撃により脱捕獲された水素は,動き得る水素と捕獲水素との再結合により再放出されるモデルを新しく提案した。更に,これに基づき、脱捕獲断面積,捕獲係数およびこの場合の再結合係数を決定した。 3keVH^+_2イオンを1×10^<19>/cm^2注入した黒鉛からのHの等温加熱再放出量を測定・解析し,熱的に脱捕獲された水素は、動き得る水素間の再結合により再放出されることを示した。又熱的脱捕獲係数およびこの場合の再結合係数を決定した。更に2つの再放出過程における再結合機構の相異は、イオン衝撃により脱捕獲された水素は励起状態にあることによるとの結論に達した。 炭化クロム(Cr_7C_3)や炭化タンタル(Tal)について照射下では、水素が飽和値より10%多く捕捉される,動的捕捉が確認された。
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