温度勾配下でのジルコニウム中の軽水素およびトリチウムの再分布を530Kより860Kの温度範囲で測定した。再分布実験は直径5mm、長さ50mmのジルコニウム試料を高真空(10^<-7>torr)で1373Kに2時間加熱焼鈍後、軽水素もしくはトリチウムを0.5at%均一に溶解させた後、大気中で500℃に加熱して試料表面に薄い酸化膜を形成させた。この試料の軸方向に10K/cmの温度勾配をかけて、軸方向の水素同位体の定常状態における再分布を測定した。再分布状態の解析より軽水素およびトリチウムの輸送熱Q^*を決定した。得られた輸送熱Q^*に明確な同位体依存性は見出だされなかった。また、輸送熱Q^*は温度上昇に伴い増加することが判明した。本実験で得られた輸送熱の値を従来報告されているMorozumiおよびSawatzkyの軽水素に対するデ-タと比較した結果、600K以下の温度領域では比較的一致するが、それ以上の温度領域では本実験結果は彼らの値より大きく、860K付近では50%以上も大きくなることが判明した。なお、ジルカロイ合金中の軽水素およびトリチウムの温度勾配下における再分布に関しては現在測定が続行中である。また、ジルカロイ合金の表面を大気中の酸素で酸化して、表面状態の変化をオ-ジェ電子分光分析法で調べた。表面酸化物の化学組成は従来より多数の報告例があるので、本実験ではとくに酸化温度と酸化時間の関数として、表面酸化物の厚さを制御する方法を確立した。特に、アルゴンイオンスパッタリングによる深さ方向分析の際に重要となる、オ-ジェ電子脱出深さおよび原子混合効果の補正計算を行なうことにより、酸化膜の厚みを正確に評価する方法を確立した。
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