研究概要 |
ウランの三重核分裂によりトリチウムが生成する確立は核分裂10000回に約1回の割合であるが、電気出力1000MWの軽水炉を300日運転すると、軽水炉燃料要素中に約16,000Ciのトリチウムが生成する。これは他の発生源である制御材中の硼素(B)から生成するトリチウム量も含めた炉心全体での発生量の80〜90%に相当する値である。本研究ではこの燃料要素中で発生したトリチウムが冷却水中に移行する量を評価するために必要な素過程の基礎データの取得を行なった。考慮した素過程は(1)ジルカロイ被覆管材中のトリチウムの拡散に及ぼす温度匂配の影響,(2)ジルカロイ被覆管材中の軽水素と拡散流との相互作用、(3)被覆管材中の溶存酸素の影響、である。3年計画の最初にまずトリチウムの拡散に及ぼす温度匂配の効果を明らかにした。この研究成果は1992年の秋に京都で開催された「拡散に関する国際シンポジウム」で発表した。また、高温高圧水によるジルカロイの酸化に伴う軽水素吸収の機構を明らかにするため、ジルコニウムとジルカロイの水蒸気酸化実験と水素吸収量の測定を行なった。特に、ジルカロイの熱処理による微細組織の変化と酸化挙動および水素吸収量の違いの相関関係を明らかにした。また、ジルカロイ被覆管材中に溶存する酸素の水素同位体の拡散に対する影響を調ベるため、ジルカロイ中の水素同位体の拡散係数を精度良く測定できる、しかも従来にない特徴を有する全く新しい水素同位体注入法を開発した。この注入法は水素ガスのグロー放電に基づくもので、H,D,Tの全ての同位体を簡便に金属表面に注入できるものである。この方法の妥当性はジルコニウム金属中の軽水素の拡散係数の測定により確認した。
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