研究概要 |
完成したダクト(閉管路)を使用した混合砂礫の高流砂階での実験を行なった.実験用砂礫としては,当初計画通り,平均粒径が4mmで,しかし,分級の異なる4種類の砂礫を用いることとし,本年度は最も分級の良い砂礫について,流れと流砂および河床形についての総合的な実験を行なった.すなわち,流れを段階的に変化させて,それに対応した粒径別の流砂量およびその時の河床形の関係を求めた.礫床では砂床と違って砂漣や砂堆のような河床形は形成されにくいと従来考えられてきたが,実験の結果,低起伏の,しかし高速で移動する河床形が生じること,それが混合砂礫の垂直的・縦断的分級に起因することが確かめられた.この知見は,実験の礫床河川における観測によって近年得られた成果の解釈のために,有効なものと考えられる.次年度に,分級の異なる砂礫を用いた実験を行うことによって,混合効果に関する理解,具体的には混合効果の生じる条件の解明が進むものと期待される. なお,実験準備にはマサチュ-セッツ工科大学の大学院生(トム・ヒクソン)が,また実験にはジョンズ・ホプキンス大学のピ-タ-・ウィルコック助教授が参加した.研究協力者の池田宏は文部省在外研究員として本年度の大半を米国で過ごしたが,その間,マサチュ-セッツ工科大学において,閉管路実験の経験を有するジョン・サザ-ド教授と実験計画の細部について検討し,次年度以降の共同実験計画を策定した.次年度夏〜秋には,ジョン・サザ-ド教授とピ-タ-・ウィルコック助教授が来日して,長期間の本格的実験を行う予定であり,そのための経費をNSFからすでに得ている. 実際河川における高流砂階の砂礫の流れに関する研究としては,大井川上流の渓流における調査を継続するとともに,富士山大沢において11月28日に発生した“土石流"による流砂と地形変化の調査を開始した.
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