研究概要 |
従来用いられている小型の開水路実験装置には、礫床河川における砂礫の流送現象を再現するためには、流れが弱すぎるか、あるいは流れを強くしようとすると勾配を著しく大きくせざるをえないという限界があった。 本研究では、やや大型の閉管路実験装置を用いることによって、実際河川と同様に緩勾配でありながら、しかし高速の水流による砂礫の流送現象を生じさせることに成功した。実験には、平均粒径4mmの2種類の砂礫が用いられた。ひとつは径2〜8mmの分級の良い礫で、もうひとつは径0.5〜64mmというきわめて分級の悪い混合砂礫である。 いずれの砂礫を用いた実験においても、流速が毎秒2mを越える強い流れにおいてさえも、従来の考えに反して、河床表面にはデューンが形成された。デューンは流れが強くなって流砂量が増えるほど大きくなり、また前進速度が大きくなった。デューンの形状と移動速度とから流砂量を正確に求めることができることも確かめられた。 さらに、デューンの移動には、水深の大きな水槽に生じさせた個々の波の前進速度と波群の前進速度との関係と同様な性質が発見された。すなわち、はじめに生じた高さが低くて速く進むデューンは、流れが強まると下流のデューンに追いつき・合体して、高さが大きなデューンとなり、同時に前進速度が半減した。 大井川や黒部川などのような礫床河川の河床にはバー(bar,砂礫堆)は形成されるが、砂床河川において流れや流砂に強く影響を与えることが知られているデューン(dune,砂堆)は形成されないものと考えられてきた。そのため、わが国においては礫床河川におけるデューンの観測例はない。流砂量の多い礫床河川において、出水時にデューンが形成されるか否かをソナーなどによる観測によって早急に確かめることが望まれる。もしデューンが形成されるならば、その移動速度から、現在ではまず不可能とされている礫床河川の流砂量を測定できるからである。
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