琉球列島の主要諸島の海岸地形を調査し、以下の結果を得た。 1.沖永良部島では完新世離水サンゴ礁の測量とサンゴ化石の採取を行ない、さらに北西海岸で津波堆積物を確認した。それらの結果から、同島の完新世地殻変動は沖縄トラフの拡大によると考えられる。今後サンゴ化石の年代値が得られれば具体的な年代に基づく考察が可能になる。 2.伊是名島では、完新世離水サンゴ礁、離水ビ-チロックおよび二重ノッチを確認した。このうち完新世離水サンゴ礁と離水ビ-チロック中のサンゴ化石の年代値が7件得られ、約3000年前に海面が急激に低下したことが推察された。 3.沖縄島では南部海岸の完新世離水サンゴ礁を詳細に調査し、従来の研究に加えて、2回の海退現象が起きた可能性を確認した。 4.宮古島および石垣島の海岸地形の調査から、新たな津波堆積物を採取した。それらはこれまでの研究の総括となるサンゴ化石群である。 5.薄片作製機によって、ビ-チロックおよびサンゴ礁堆積物の薄片を作成し、古環境の復元と、潮上帯・潮間帯・潮下帯の区分が可能になり詳細な考察を行ないつつある。 6.以上から琉球列島の完新世地殻変動の特徴は、東方のフィリピン海プレ-トの琉球海溝へのもぐり込み作用、および西方の沖縄トラフの拡大運動によって活発に変動していることが確認された。さらに南琉球弧周辺海域では過去数千年間の津波の周期も把握しつつある。平成3年度の研究において、以上の総括と集大成を行なう予定である。
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