研究概要 |
富士山を中心にしその周囲の富士五湖を含む地域の自然変動のシステムを理解するため,五湖の湖水位変動資料の収集,富士山麓地域での現地調査,主に山中湖の湖底ボ-リングコアの古環境解析等を行って検討した. 1.富士五湖の水位記録について近年の分を除きほぼ収集することができた.これらと気候デ-タや湧水資料との関係を検討した.水収支諸量変遷過程との関連において湖水位変動のメカニズム解明を図る必要がある. 2.富士山麓部でのテラフを主とする調査から,完新世の富士火山の従来の詳細な活動史(上杉他,1978;宮地,1989等)に対して,さらに新しい知見を加えることができた. 3.山中湖で既に得ているボ-リングコアについて,花粉,珪藻,テフラ分析を進め,最近2000〜2500年間の環境変還について新たな知見が得られた.特に,山中湖のボ-リングコアの分析から,新富士火山宝永噴火(1707年)のテフラを初め,延暦・貞観噴火(AD 800ー864年)のテフラなどが発見され,コアの年代が明確となった. 以上を総合して,富士山周囲の自然変動のシステムを検討した.特に新たな知見として,山中湖の成立の過程が初めて証拠づけられた.珪藻分析からは延暦・貞観と推定されるテフラの降下直後から浮遊性種が急増し,このテフラを狭んで,水路の発達するような湿地的環境から,現在と同じ水深のある湖の環境に変化したことが明らかとなった.またこの間の花粉組成は周囲で得られたこの時期のものと矛盾がないが,特に,スギ属花粉の増加・減少から過去2000年間の環境の推移が明らかとなった.それは富士山東麓の御殿場地区と同様の傾向を示した.平成3年度以後さらに多くの地点で検討を進める必要がある.また,湖沼への土砂流入過程を明らかにする地表踏査も加えていく必要がある.
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