研究課題/領域番号 |
02452299
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 孝嘉 東京大学, 理学部, 助教授 (60087509)
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研究分担者 |
吉澤 雅幸 東京大学, 理学部, 助手 (60183993)
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キーワード | ロドプシン / バクテリオロドプシン / 14ーフルオローバクテリオロドプシン / フェムト秒吸収分光 / 波長可変フェムト秒光パルス / レチナ-ル / レチノイド蛋白 |
研究概要 |
ロドプシンやそれと関連するレチノイド蛋白等の光吸収直後の極めて短い時間領域の動的構造変化を明らかにすることが、本研究の目的である。このために、昨年度に引続いて400〜600nm帯の波長可変のフェムト秒光パルスが得られる光源を製作した。波長変換の方法としては、フェムト秒パルスの自己位相変調によって広帯域光を発生し、その一部分のスペクトルをQスイッチNd:YAGレ-ザ-の第三高調波で励起した色素増幅器で増幅する方法を用いた。これにより、波長500〜570nm、パルスエネルギ-1〜30μJ、パルス幅約300フェムト秒の波長可変フェムト秒パルスを得た。 この光源を今までフェムト秒領域の研究がなされていなかったタコロドプシンの光初期過程の研究に応用し、以下の知見を得た。 (1)励起状態の誘導吸収が波長600〜700nmにかけて観測された。 (2)励起後400フェムト秒以内にcisーtrans異性化が起こり、プライムロドプシンが生成する。 (3)プライムロドプシンは基底状態の中間体である。 (4)プライムロドプシンがバソロドプシンへ変化すると、吸収が5〜15nm短波長シフトする。この過程は10〜20ピコ秒の時定数を持ち、発色団のねじれの変化を伴っていると考えられる。 (5)励起後、バソロドプシンに至るものの他に、一部分は「発光する状態」に分岐する。この状態は800nmより長波長側に利得を持ち、2〜4ピコ秒の寿命で減衰する。 さらに、バクテリオロドプシンの光異性化過程において、発色団の電子状態が異性化のダイナミクスに対してもつ役割に関する知見を得るために、14ーフルオロバクテリオロドプシンのフェムト秒吸収分光を行なった。この結果から次のような結論を得た。 (1)暗順応状態では、14ーフルオロバクテリオロドプシンの励起状態(I_<460>)の寿命は500±100フェムト秒であり、通常のバクテリオロドプシンの場合とほとんど変わらないことがわかった。このことから、発色団のtransーcis異性化のダイナミクスを支配している因子は蛋白質ー発色団相互作用であると考えられた。 (2)明順応状態は、暗順応状態に比べて長い寿命(1.0±0.2ピコ秒)をもっていた。このことはシッフ塩基の周囲のプロトン供与基と発色団の間の相互作用を考えることによって定性的に説明できた。
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