重度脳性マヒ児の運動パタ-ンの定量的計測方法としてこれまで確立されたものがない。このため、今年度の研究は、計測システムの構築に重点を置いて行った。 磁気式の3次元位置検出器を購入し、金属の釘・ネジを一本も使用しない木製の椅子を設計・製作した。これは、予想以上に位置検出精度が周囲の金属に影響されたために、苦慮した点である。木製の椅子に被験児を座らせ、座位を固定させることを試みたが、対象児によるバリエ-ションが大きく、また、固定することに対する過緊張等の不安定要因が現れたため、椅子に半固定の木製のテ-ブルを制作し、テ-ブル上の上肢の運動を3次元的に計測できるようにした。 位置検出器(センサ-)を指先に配置・固定することは困難であるので、握り棒を制作し、位置検出器から離れた棒の先端部の位置が計測できるように、検出器のアジマス角度、エレベ-ション角度をもちいて実時間で棒の先端部の位置を算出するプログラムを開発した。また、同一ル-トに対する3次元軌跡の比較を行い、軌跡の恒常性と不安定性から随意運動と不随意運動を考察するため、一定時間毎に位置を計測する時間デ-タと、変位が一定になるようにした変位デ-タ、変位デ-タの個数を一定値に正規化した正規デ-タの3種類のデ-タを実験毎にフロッピ-に記録するシステムプログラムを開発した。 開発した実験システムを用いて、現在、重度脳性マヒ児の医療施設において、基準とする重度脳性マヒ児の上肢運動パタ-ンの検討を行っている。 今年度の研究成果については、平成3年8月に行われる第6回リハ工学カンファレンスにおいて発表する予定である。
|