重度脳性マヒ児・者の中には、潜在的な知的能力は優れているが、運動機能が著しく低く、発声・発語困難や、手足を随意的に目的の位置へスムーズに移動できないために能力が低くみられ、教育・訓練の場面において正当な評価、訓練・教育が行われていない場合がある。本研究では、これらの障害児の一見でたらめに見える運動を無拘束に近い状態で計測・解析し、不随意運動成分と随意運動成分を分離・抽出する方法を見いだす基礎試料を得ることを目的とする。本研究では、重度脳性マヒ児を被験者として計測を行うため、指先の位置を検出する際、上半身が手の上に覆いかぶさり頭や衣服によって指先が見えなくなることや、涎によって検出部が濡れるなどが考えられる。以上の理由により、磁場の変化を利用した位置検出方式を採用し、簡単な幾何学図形上を指示具でトレースさせ、その軌跡を計測・蓄積した。さらに、手・足の運動以外の運動についても注目することにした。特に音響パラメータに注目し、フォルマント周波数分析を行いその安定性を計測した。また、人間による音声の明瞭度(語音明瞭度)の測定や、音声認識装置による認識率(機械による語音明瞭度に相当)の測定を行い、音声の不安定性とその対応について研究を行った。その結果、不随意運動に基づく不安定な要因を他の手段でカバーし、障害児が目的とする意思表示を迅速に行うことのできる機器を設計する基礎的データが得られた。以上のごとく、重度障害児の意志表出動作における、不随意運動に基づく不安定要因を取り除くための基礎資料を得る当初の目的を達成し、研究を終了した。
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