研究概要 |
本年度は、本補助金により購入したパ-キンエルマ-社製の円筒鏡型電子エネルギ-分析器(15ー255G)を既存の超高真空装置に組み入れて、マイクロコンピュ-タ-制御によるデ-タ収集、解析のためのプログラム開発を初めに行なった。その装置を用いて、(1)光電子分光、低速電子回析によりNi(7 9 11)清浄表面の電子状態と構造を調べ、さらに、(2)Ni(7 9 11)表面への、S,H_2,Naの化学吸着の測定を行なった。 それらの結果に基ずいて、(3)SがNi(7 9 11)表面上のステップに選択的に吸着していると考えられる初期吸着の状態で、表面EXAFSの測定を行なった。結果を次に要約する。 (1)Ni(7 9 11)清浄表面上のステップに固有な局在化した電子準位を見出した。これまで単結晶傾斜面上の単原子ステップに固有な電子準位の存在は理論的には予想されていたが実験による検出は報告されていない。今回、シンクロトロン放射のエネルギ-連続性と強い直線偏向性の特徴を利用したことにより始めてステップに固有な電子準位を検出した。(文献4,5) (2)SとNaが吸着量の少ない初期にNi(7 9 11)表面上のステップに選択的に吸着する実験条件を見出した。触媒毒であるSと触媒活性を示すNaがどちらもステップに選択性良く吸着することは興味深い。(文献1,2,5) (3)表面EXAFSの解析結果から、Ni(7 9 11)表面上のステップを形成している4ーfoldサイトに選択的に吸着していることが分かった。(文献1,2) (4)H原子は、Ni(7 9 11)表面上のステップ周期を再配列させることがわかった。これはH原子がステップを入口としてテラス面直下に侵入して吸着するためと考えられる。これは、ステップが固定されたものでなくダイナミカルな性質を持っていることを示している。
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