研究概要 |
ポリアセチレンの合成方法が改善されたことにより、今迄のポリアセチレンに比して、ずっと大きな電気伝導性が示されるようになった。 それがどういう高分子構造にもとづいて発現したのかを明らかにする目的で、電気的,光学的性質の研究を行った。高い電気伝導性が、多量のド-ピングにより得られることから、ド-ピングに伴うスペクトルの変化について研究した。特に新しいポリアセチレンは、延伸により高い配向性を示すフイルムが得られるので、その偏光測定を行って、吸収帯の帰属を明らかにすることを試みた。その結果、ヨウ素をCHIyとし、y<0.07の濃度領域では、4500cm^<-1>にピ-クを持つ、荷電ソリトンに由来するバンドが出現し、さらにド-ピングが進むと、500cm^<-1>附近のバンドが強度を増すと共に、金属的電気伝導性が出現することが、明らかにされた。その際、電子構造の変化が、どのようにおこっているかを明らかにするために、分子軌道法によるモデル分子の計算を行い、荷電ソリトン構造と、ポ-ラロン構造が一体となった、ポルソン構造と名付けた新しい単位が、金属的性質と、500cm^<-1>附近のスペクトルのもとになっていることを明らかにした。さらにポリアセチレンのシス体,トランス体の構造と、紫外光電子スペクトルの研究を行い、またド-ピングに伴う、紫外光電子スペクトルの研究を行って、電子構造の変化ー特に金属状態の出現を明らかにすることを試みた。フエル三準位に対応する光電子スペクトルが見出されたことで、実際に金属状態の出現を証明することができた。
|