研究概要 |
本研究課題の目的は、有機金属ラジカルや電荷移動錯体等の極低温磁化率を測定し、研究室既設の極低温熱量計による熱容量測定による熱力学的研究と組合せることにより、特異な磁気的相互作用を明らかにすることである。 1.Quantum Design社製の高感度DC SQUIDを ^3Heクライオスタットに装着させることにより、0.5〜20K領域で作動する磁化率測定装置を完成させた。検出感度が極端に高いため、地磁気の遮蔽や電磁ノイズの除去に苦労を要した。 純粋な有機ラジカルであるニトロキシルラジカルを有するメタクリル酸エステム(MOTMP)及びアクリル酸エステル(AOTMP)の熱量測定とデ-タ解析を行ない、MOTMPについては速報誌に論文投稿した。 3.混合金属錯体{NBu_4[CuCr(ox)_3]}_xの熱容量測定を1.1〜25K領域で行ない、6.8Kに強磁性相転移を見出した。 4.混合金属錯体MnCu(obbz)・5H_2Oの熱容量測定を13〜300K領域で測定し、昨年度測定した極低温部(0.07〜25K)に接続させた。今回新たに、268Kに、結晶水に起因すると考えられる大きな相転移を見出した。 5.2核混合原子価錯体であり、同時に有機金属ラジカルである1',1"'ージイオドビフェロセニウム・トリアイオダイドの極低温熱容量を0.08〜25K領域で測定し、0.6Kを頂点とする熱異常ピ-クを観測した。これは分子内電子移動が、分子振動とカップルしたトンネル分裂による熱異常であることが判明し、珍しい事実として速報誌に投稿した。 6.イオン性ー中性相転移を示す電荷移動錯体TTFーCAの熱容量測定を12〜30Kで行なった。
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