研究概要 |
金属イオンとアンモニアクラスタ-との反応について研究した。アンモニアクラスタ-(NH_3)_nが含まれる分子ビ-ム(NH_3250Torr/Ar500Torr)を用いてM^+との反応を行わせた。電子線衝撃でモニタ-すると(NH_3)_nH^+がn>20まで見出された。金属基板ノレ-ザ-アブレ-ションによって、Mg^+、Al^+、Cr^+、Mn^+、Fe^+、Co^+、Ni^+、Cu^+、Ag^+との反応を行わせるとクラスタ-錯体イオンM^+(NH_3)_n(N=13ー20まで)が得られた。(V^+ではH_2の脱離したV^+NHも観察された。)多くのM^+の場合、M^+(NH_3)_nの分布に特徴的な強度ギャップがみられる。たとえばCo+ではn=2と3との間に、V^+ではn=4と5との間に強度ギャップがある。V^+ではさらに、n=8と9との間に第二の強度ギャップが存在するようである。他の金属イオンも含めて調べてみると、Cr^+,Mn^+,Fe^+,Co^+,Ni^+,Cu^+とAg^+ではn=2と3の間に、Mg^+では、n=3と4の間に、V^+ではn=3と4との間に強度ギャップが見出される。これらは気相における錯体イオンの安定な配位数と関連づけられるであろう。本研究の実験方法はきわめて簡単であるにもかかわらず、気相配位化学についての重要な情報を与えている。 またTi^+、V^+、Nb^+、Ta^+の場合にはH_2の脱離したフラグメント錯体イオンも観測された。V^+はH_2を脱離するがその傾向が小さく、フラグメント錯体イオンとしてはV^+NHがみられたのみであるが、Ti^+,Nb^+,Ta^+については多くの種類のフラグメント錯体イオンが観察された。Ti^+NH(NH_3)_n、n≧1は明らかにクラスタ-錯体イオンTi^+(NH_3)_m、m≧n+1から生じている。このような、クラスタ-錯体イオンからの脱水素反応は、本研究ではじめて報告されたものである。Nb^+やTa^+は二重に脱水素反応を起こしたイオン、M^+(NH)_2(NH_3)_n、n=0,1がみられる点できわめて特異である。Ta^+の場合にはTa^+(NH)_2(NH_3)_nの強がTa^+NH(NH_3)_<n+1>、Ta^+(NH_3)_<n+2>の系列のなかで最も大きかった。このような多重に水素脱離したイオンの生成機構はきわめて興味深い。
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