有機硫黄、セレン化合物の組織化と新合成試剤開発の研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02453018
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 古川 尚道 筑波大学, 化学系, 教授 (80015966)
• キーワード: スルフォキシド / 光学活性 / ピリジル / カップリング反応 / 位置選択的 / 不斉誘導 / チアントレン / セレナントレン

研究概要

1)ピリジン環を有するスルフォキシドの組織化と立体化学の研究
ピリジン環を有するスルフォキシドを合成し、組織的に機能化させることにより各種の新規な反応を見いだした。ピリジン環のα-、β-、γ-位にスルフィニル基[RS(0)-]を導入したのち、lithiumdiisopropylamide(LDA)のような強塩基と反応させると、スルフィニル基のα-位のプロトンが位置選択的に引き抜かれて、カルバニオンが生成し、各種の親電子試剤(アルデヒド、ケトン、ジスルフィド、シリル基)との反応で、ピリジン環の望む位置にこれらの置換基を導入できる事を見いだした。更に、グリニャ-ル試薬、有機リチウム等を反応させると、硫黄原子上で置換反応が起こり、脱スルフィニル化したピリジンの誘導体の合成、またはリガンドカップリング反応による、アリルピリジル、ビピリジル類が高収率で得られることが見いだされた。光学活性なスルフォキシドを用いると、不斉誘導反応が起こり光学活性中心を2ケ有する化合物が得られた。この化合物を用いたリガンドカップリング反応では、不斉原子と軸不斉を併せて持つ化合物が合成できる事を見いだした。更に、光学活性なピリジルメチルーpートリルスルフォキシドの不斉アルド-ル反応を用い高い不斉収率で光学活性なアルコ-ルを合成した。
2)チアントレン、セレナントレンのリチオ化と位置選択的置換基導入反応チアントレン、セレナントレン等を組織的に研究し、その特性を生かした、有機反応試薬としての用途を見いだすことを目的とした。チアントレン、セレナントレンはいずれも酸化電位が低く容易に、電子の授受を行う。チアントレン、セレナントレンを酸化しオキシドとしたのち、LDAを用いてリチオ化、親電子試薬との反応で、これらの化合物の1、9-位に容易に置換基を導入できること、更に、有機リチウム試薬との反応で、環縮小したジベンゾチオフェン、セレノフェンが得られ、これらの化合物は電子の良い運搬体になるという興味ある事実を見いだした。

研究成果

• [文献書誌] N.Furukawa: "Regioーaand StereoーSelective Lithiations and Extremely Facile Ligand Exchange Reactions of Diaryl Sulfoxides with Organolithium Reagents" J.Org.Chem.,.
• [文献書誌] N.Furukawa: "Reactions of Sulfoxides Bearing orthoーSulfur Functional Groups and Thianthrene Monooxide with Grignard Reagents." Chem.Lett.,. 979-983 (1990)
• [文献書誌] N.Furukawa: "A Convenient Preparation of Sterically Crowded 1,9ーDisubstituted Dibenzothiophenes and 3,3'ーDisubstituted Diaryl Sulfides" Heterocycles,.
• [文献書誌] N.Furukawa: "Role of Heterocycles on the Stereoselective Reactions of ーSulfinyl Carbanions Using Optically Active 2ーPyridyl pーTolyl and 2ー(Nーmethylimidazolyl)methyl pーTolyl Sulfoxides with Aldehydes." Heterocycles,.
• [文献書誌] N.Furukawa: "A New Approach for Preparation of Atropisomers of Arylpyridyls via CrossーCoupling Reactions of Aryl 2ー(3ーSubstituted)Pyridyl Sulfoxides with Grignard and Organolithium Reagents." Tetrahedron Letters,.
• [文献書誌] N.Furukawa: "Studies on Transannular SーS Interaction in Sterically Congested 1,9ーDithiadibenzothiophenes:Generation of New Dithiadications and Cation Radicals." Tetrahedron Letters,.