研究概要 |
本年度は、CH・・・π類似相互作用が広く炭化水素基の間の引力的相互作用として寄与していることを明確にするために、具体的に次の研究を行った。 (1)αーフェランドレン等における円二色性スペクトルの異常性について、電子遷移への溶媒効果等の実験、ab initio計算による理論的研究の両面から研究し、CH・・・π相互作用による効果として説明した。更に、我々が以前から取り上げていたArCHMeXR'型化合物の一種である4ーmethy1ー2ーpheny1ー3ーpentanoneについて旋光強度を理論的に計算し、イソプロピル基のCHとベンゼン環のπ電子系との相互作用が可能な配座で異常性が見られることを示し、炭伸水素基とπ電子系との相互作用による旋光性への効果が一般的であることを示した。 (2)内分子CH・・・π相互作用を持つモデル系として、適当な位置にジュウテリウム置換された一連の置換ベンジルアルキルエ-テルおよびアミン(XC_6H_4CR_2XCDR_2;X=O,NR,R=HまたはMe)について、赤外部のCD吸収帯および ^2HーNMRを測定してCH(D)・・・π相互作用する置換基の電子的効果の定量的評価を試みた。この結果、ベンゼン環上の置換基が電子供与性になるほど分子内CH・・・π相互作用が有利になることが知られ、その水素結合類似性が実証された。更に、これらの化合物についてNOESY等の2DーNMR測定やランタノイド誘起シフトの測定に基づいて立体配座の解析を行いCH・・・π相互作用が起こるための立体的要請について論じた。 (3)CH・・・O水素結合系について、その存在範囲と相互作用エネルギ-について研究に着手し、ホルミル基等の比較的強い水素与体を含む系について成果を得た。
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