研究概要 |
ニトロアルケンを出発物質として利用することにより各種のピロ-ルを合成し,続いてこれらピロ-ルをポルフィリンに変換し,その物性評価を行った。この方法によって次の様な興味深いポルフィリンの合成ができた。(1)ポルフィリンの周辺部が全て2ーチェニル基で置換されたドデカチェニルポルフィリン(DTP)は近赤外に吸収を持つ新規ポルフィリンで,その鉄錯体は酸化反応の触媒として有効であった。この新触媒の特徴は二重結合の選択的エポキシ化反応にみられる。これまでの鉄ポルフィリンではアリル酸化とエポキシ化とが同時におこったが,本触媒ではアリル位の酸化は完全に制御できた。(2)ポルフィリンの側鎖にドナ-とアクセプリ-の両者を専入した親規ポルフィリンの合成に成攻した。このポルフィリンは,ポルフィリン多量体を容易に形成する特徴を有する。(3)ポルフィリンの側鎖に糖置換基を有する新規水溶性のポルフィリンの合成に成攻した。(4)ポルフィリンの側鎖に電子吸引性をもつポルフィリンの新規合成法の開発に成攻した。本年度の研究により各種機能を有するポルフィリンの新規合成法の開発が完成した。本方法によりポルフィリンの機能と分子設計の基本が確立できた。ポルフィリン環の電子状態と触媒機能との関連が明らかになった。今後の研究として以下の点を明らかにする必要がある。(1)アルケンの酸化触媒に於て,アリル位の選択的酸化をおこすポルフィリンの設計。(2)ポルフィリン多量体の電導性の評化。(3)水溶性ポルフィリンを用いた酸化反応。(4)電子吸引性基として,フッ素,ニトロ基置換ポルフィリンの合成とその触媒作用,これら問題点を解決する必要がある。
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