ニトロアルケンを出発物質とした任意のピロ-ル、及びポルフィリンの合成に関する研究を行い以下の成果を得た。(1)ポルフィリンの周辺部が全て2ーチエニル基で置換されたドデカチエニルポルフィリン(DTP)の合成:このポルフィリンは、他の通常のポルフィリンに比べ、HOMOとLUMOの差が非常に小さく、特異的な挙動を示した。例えば、ZnDTPの吸収波長は508nmにあり、これまでよく研究されているZnーテトラフェニルポルフィリン(TPP)よりも、約100nmも長波長シフトしている。酸化一環元電位差も1.6Vであり、ZnーTPPの2.2Vであり、このポルフィリンが容易に電子を授受できることを示している。DTPのFe(III)錯体の酸化触媒機能について検討したところ、これまでのポルフィリンに比べ、より高い選択性でエポキシ体を与える事が分かった。(2)ドナ-とアクセタプタ-をもつポルフィリンの合成:ポルフィリンの側鎖にドナ-(アニシル基)とアクセプタ-(ニトロ基)を交互にもつポルフィリンは、ポルフィリン分子が電子的影響で強く配列する傾向をもつ事が分かった。例えばこのポルフィリンの銅錯体のESRは、CuーCuの2核錯体を示し、その間の距離は約4Aと見積もられた。(3)ポルフィリン側鎖に糖置換基をもつ水溶性ポリフィリンの分成:このポリフィリンは中性でしかも自由に水に溶解する性質を持っている。このポルフィリンは、水中で効率よく光と酸素から一重項酸素を発生させることが出来た。また、水中で各種金属錯体を形成した。(4)エステル、ニトロ、シアノ、フッ素をもつポルフィリンの新規合成法の開発:これまで因難であった電子不足ポルフィリンの効率的な合成法が開発できた。以上の研究により、ポルフィリンの電子状態を自由に制御することが可能になった。このことは、ポルフィリンの関与する各種機能を制御する基本が確立できたことになり、今後さらによりすぐれた機能分子を設計する基礎となる。
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