研究概要 |
任意の塩基配列でDNAを特異的に切断する人工制限酵素の開発を目指し,まず効率の良いDNA切断分子をデザイン・合成し,これにリンカ-を介して二重鎖DNAと特異的に結合するドラッグあるいはDNAプロ-ブに連絡し人工制限酵素を構築する試みを行った。 まず,天然抗ガン剤であるエスペラミシンのモデルであるエンインアレン系の化合物を合成し,これが室温下で効率良くビラジカルを発生しDNAを切断することを見い出した。各種の置換基を有するエンインアレンのうち,スルホキシ基を置換した化合物が最も効率良くDNAを切断することがわかり,この置換基効果は分子軌道計算結果とも良い一致を示した。従って,この系列の分子が人工制限酵素構築のためのDNA切断分子として利用できることが判明した。 次に,光照射で駆動するDNA切断分子のデザインを行った。360nmの光で効率良くDNAを切断する分子としてナフタルイミド誘導体が極めて優れた機能を有することがわかり,この分子は360nm照射で水酸ラジカルを発生するので,我々はこの化合物を光フェントン試薬と命名した。この化合物はDNAを極めて選択的に光切断する。長鎖の人の二重鎖DNAのフラグメントを用いてDNA切断を調べたところ,ーGGーサイトのみ特異的に切断することが判明した。この分子をDNAバインダ-に連絡することにより,より塩基配列特異性の高い人工制限酵素をデザインできることが明らかとなった。
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