研究概要 |
優秀な希土類ー電子還元剤であるヨウ化サマリウム(II)を用いて、従来困難とされている環化反応による中員および大員炭素環化合物の合成を検討した。まず第一の環化法として試みた分子内レホルマツキ-反応は、予想通り8ー15員環化合物を高収率で与え、本法が中員および大員炭素環合成法として優れていることが明らかとなった。本反応はサマリウムエノラ-ト中間体を経て進行していると考えられるが、中員環化の高い歪みに打ち勝ってモノマ-生成に有利なキレ-ト構造がとれるのは、サマリウムの特性である高い酸素親和性、高配位数、長いイオン半径などが有効に働いたためと考えられる。第二の環化法として試みたケトンとアルキンとの還元的炭素ー炭素結合生成反応は環化には適さないことが明らかとなった。しかし、このラジカル反応は、従来困難とされている分子間反応に有効であり、ほぼ中性の条件下アルキンをアルケニルアニオン等価体として用いることができるので合成的有用性は高い。ハロゲン化アリルとアルデヒドとの反応は中員環化成績体を与えない。また、カルボン酸クロリドやα,βー不飽和エステルの還元的二量化も中員環合成には有効でないことがわかった。しかし、後者の反応は、分子間反応および3ー6員環の合成には有効であった。また、おもしろいことにクロトン酸アミドの二量化はdl体のみを選択的に与えることが明らかになった。このことはサマリウム上で反応の立体規制が行われていることを示しており、分子間ラジカル反応の立体制御の観点から興味が持たれる。最後に、ピナコ-ルカップリングによる10員環の生成を試みたところ、反応系にランタントリフラ-トを共存させると収率が向上し、一方のジアステレオマ-が選択的に得られることを見出した。これはまだ初歩的な結果であるが、この方法に関しては今後さらに詳しい検討を行う価値がありそうである。
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