(1)カイコ5齢幼虫(3000頭)の体液を採取しディ-プフリ-ザ-に保存。被検菌とした大腸菌E.Coli S/M1ー1に対する抗菌活性は-80℃で維持されることを確認。(2)リゾチ-ムフラクションの分離はキチンの種類により左右され、ナカライテスクGRグレ-ドのキチン(from crab shell)が最もよいことを確認。(3)原体液では木下らの方法によれば十分な抗菌活性が検出されるが、他の方法では活性の検出が困難であった。これは体液中に菌の増殖を増強する物質が含まれているため、抗菌性がマスクされているからであろうと推定された。(4)抗菌活性試験は、木下らにより報告されたコロニ-カウントを使用した方法を最終的な判定方法とした。しかし、この方法は分離操作後に得られる多数の分画を全て検定するには実用的でないため、簡易型の活性試験を種々検討した。(5)本研究で対象としている複合系による抗菌活性の発現には、溶液中で反応させることが必要で、抗菌活性の検定に通常用いられているゾ-ンアッセイ法は使用できないことが判明した。そこで種々の方法を検討した結果、市販の大腸菌群増菌確認用の乳糖ブイヨン「ダイゴ」を用いた液体倍地による簡易型のアッセイ系を確立した。(6)正常体液中の複合系抗菌活性物質の一方の必須成分であるリゾチ-ム画分は、キチンのカラムより酢酸により溶出されるが、その後の処理方法によって活性が大幅に変動することが判明、適度な脱塩中和法を確立した。この画分は木下らの報告とは異なり、それ自体でも抗菌活性を示すが、この画分と組み合わせたときのみ抗菌活性が強く現われる成分が、キチンに捕捉されない画分よりゲルろ過クロマトグラフィ-で得られた画分の中に、高分子領域から低分子領域まで10種類以上存在することが明かとなった。
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