グルタミン酸受容体は運動や反射、記憶や学習の形成と共に神経細胞死と密接に関連していることから、生命科学の重要な研究課題の一として興味を集めており、我々は有機化学の立場から本課題に取り組んでいる。先に我々はグルタミン酸の立体配座を固定した類縁体、4種のL-2-(カルボキシシクロプロピル)グリシン(CCG-I〜IV)類の研究から、イオンチャンネル型(A)の受容体にはfolded型、代謝調節型(B)では、extended型のCCG類が結合する事を明らかにした。その結果、CCG類は神経科学研究のための重要なツールとなるとともに、グルタミン酸受容体の立体配座要請の解明の有力なプローグとなることが明らかになった。 研究期間を通じて、グルタミン酸のα-アミノ基の回転によるコンフォマーについて、CCG類をプローブとした精密配座解析(分光学的手法)を行い、またグルタミン酸のα-アミノ基の回転を凍結できる幾つかの新しい合成も完成した。その結果、受容体結合に係わるリガンドの活性コンコォマー、(A)(B)の受容体との結合に必要なグルタミン酸の極性官能基の空間座標を推定できた。(詳細は科研費研究報告書に記載)以上、3年間を通じ、グルタミン酸の立体配座を制御した分子設計から受容体の立体配座要請にかなり迫ることができ、また新しい合成方法、有用な新マゴニストの合成も達成できた。
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