研究概要 |
紫外レ-ザ-ラマン分光システムの立ち上げに関して次の四つの問題を生じた。1)フォトダイオ-ドアレイ検出器(以下SMA検出器という)のMCP中のいくつかのピクセルが異常なシグナルを出す欠陥が見つかったため、製造元であるプリンストンインスツルメント(米国)に送り返して修理を依頼せざるを得なかったこと、2)使用したMCPは1枚であるため、期待通りの感度を出すことが出来ないことが判ったこと、3)SMA検出器用電源および高速ゲ-トパルサ-が相次いで故障を起したこと、4)微弱光集光システムの手直しと光路調整法の変更を迫られたこと。1)、2)、3)に関しては修理に際してMCPをダブルにするよう製造元に依頼して約3カ月後に修理および性能アップが完了した。4)に関しては約600枚のスペクトルチャ-トを取って、様々な角度から集光システムの改良と光路調整を行った。この結果、典型的な強いラマンスペクトルを与えるCCl_4,酢酸エチル-ジオキサン溶液については良好なチャ-トを得ることが出来るようになった。ポリチオン酸のような本来目的とする硫黄化合物のラマンスペクトルを観測したところ、通常のセルによる測定ではセルの光学面内部に直ちに硫黄の沈着が見られ、試料の急速な分解が起ることが明らかとなった。このため試料溶液の細い流れを作り直接紫外光を照射することを試みたところ、硫黄の沈着は防げたが試料溶液がパルス照射のたびに飛散することが判った。この点に関しては照射光の焦点外照射などの対策を行っている。以上述べたように、この分光システムは今だ未完成であるため、実試料のスペクトルを自由に得る段階には到らなかった。ほゞ問題点も出尽した感があるので今後比較的短期間にサンプル測定を行うことが出来ると考えている。
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