研究概要 |
1.パルスEPRおよびパルスENDOR裝置の光化学反応研究用への改造:1)光照射用試料空胴の製作,本実験に最も適すると思われる試料空胴の試作をいろいろ試みてきたが,完成までに時間を要するため,取りあえず從来の光照射用ESR空胴のQ値を低下させることで測定を進めてきた。2)從来のスピンエコ-裝置をFID信号検出型に改造を進めている。3)S/N比の向上のためquadruTure検出型に裝置の改造を進めつつある。4)レ-ザ-光源を購入設置した。5)レ-ザ-パルスと同期したパルスEPRの測定が可能なように裝置を改造した。尚裝置の改良は今後も引き続き行う予定である。 2.金属ボルフイリン錯体とキノンとの間の光誘起電子移動反応:主に亜鉛ボルフイリン錯体を用い,時間分解EPRによりレ-ザ-光誘起電子移動反応を検討してきた。その結果,ポルフイリンカチオンラジカル,キノンアニオンラジカル,これらの前駆体であるポルフイリンカチオンーキノンアニオンイオン対の同時測定に成功した。このためそれぞれの生成に対する溶媒,温度,無機塩,ポルフイリン軸配位子の効果を詳細に検討し,反応機構について興味ある知見をうることができた。今後パルスENDORによる実験を行い異なる視野からの知見をうる予定である。 3.種々のジイミンとCN^-,SCN^-を配位子としてもつ鉄(III)錯体の光化学反応を検討した。その結果,アルコ-ル溶液中では溶媒,対アニオンからの電子移動による遷元反応と,引き続いて配位子置換反応がおこることを明らかにし,その機構の詳細を解明した。また凍結溶液系では可逆的遷元反応がおこることを見出し,その機構を考察した。 4.種々のキノン存在下での金属カルボニル錯体の光化学反応を検討し生成常磁性錯体の構造,反応機構を解明した。
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