研究課題/領域番号 |
02453037
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 太郎 東京大学, 理学部, 教授 (90011006)
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研究分担者 |
小林 昭子 東京大学, 理学部, 助手 (50011705)
井本 英夫 東京大学, 理学部, 講師 (20168529)
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キーワード | モリブデン / 硫化物 / トリアルキルホスフィン / トリメチルホスフィン / トリエチルホスフィン / ヤ-ンテラ-歪 |
研究概要 |
(NH_4)_2[Mo_3S(S_2)_6]とトリアルキルホスフィンの反応により、[Mo_3S_5(PMe_3)_6]1,[Mo_4S_6(SH)_2(PMe_3)_6]2、[Mo_6S_<12>(PEt_3)_6]3を合成した。単結晶X線構造解析により1は3個のモリブデン原子から成る正三角形クラスタ-骨格の上下に硫黄が面配位、各モリブデン-モリブデン稜に硫黄が架橋、各モリブデン原子に2個のトリメチルホスフィンが配位した構造が明らかになった。超伝導シェブレル相中に存在する一連のMo_<3n>S_<3n+2>クラスタ-のn=1に対応する錯体であり、初めての例である。DVーXα法分子軌道計算により、Mo_3骨格が歪まない理由を明らかにした。すなわち、8個のクラスタ-骨格電子の占有する軌道のうち、HOMOがa_1^¨であり、JahnーTeller歪みが起こり得ないためである。2は4個のモリブデン原子が菱形をなした平面状Raft構造である。菱形を構成するモリブデンーモリブデン結合距離は等しく、モリブデン10電子系に対応する構造であることが、同じくDVーXα法計算により明らかにされた。3は6個のモリブデン原子がRaft状に結合した平面骨格を有する。面配位硫黄は融合三角面の上下に交互に配位する。各モリブデンーモリブデン稜は硫黄により架橋される。トリエチルホスフィンが各モリブデン原子に1個ずつ配位しており、配位環境が異なるので ^<31>P NMRスペクトルは3種の吸収を示す。 モリブデンスルフィドクラスタ-において2個以上の三角面が水平方向に融合した構造を持つものとして最初の例である。これらのクラスタ-は同じパタ-ンの縮合反応で生成するものと推定される。更に重合度の大きい平面状クラスタ-は固体硫化物の表面を単層に切り出したものとみなせるので固体表面の反応を解析する上でも有用であり、特異な物性発現も期待される。
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