研究概要 |
本研究は金属ー酵素タンパク質ー補酵素ー基質という酵素反応中間段階あるいはDNAに対する平面型三元錯体のインタ-カレ-ションを一つの多元錯体形成反応とみなし、これらに対応するモデル錯体について錯体あるいは分子会合体形成平衡の解析,配位子間および分子間相互作用の解明,錯体の構造解析を行ったものである。 1.銅(II)ー2,2^1ービピリジン(bpy)ーLートリプトファン(LーTrp)錯体における配位構造と分子内芳香環スタッキング 金属イオン関与の分子間相互作用の基本的情報を得るために[Cu(bpy)(LーTrp)]ClO_4を結晶として単離し、X線結晶構造解析を行って銅(II)に配位したbpyとLーTrpの側鎖インド-ル環とが3.67A^^°の距離でスタッキングを起していることを示した.また、電子スペクトルよりスタッキングが電荷移動を伴うことを確かめた。 2.白金(II)ー含窒素芳香環ーエチレンジアミンーモノヌクレオチド四元系における分子間会合 白金(II)ー1,10ーフェナントロリン(phen)ーエチレンジアミン(en)三元錯体がDNAの塩基対間にインタ-カレ-トすることからPt(phen)(en)^<2+>などの平面型錯体とDNA構成成分のモノヌクレオチド(AMP,GMP,CMP,UMP)との四元錯体形成反応をカロリメトリ-とNMRスペクトル法によって解析し,分子間会合にはphenとモノヌクレオチド塩基部分とのスタッキングおよび白金(II)錯体の有する正電荷とモノヌクレオチドリン酸基との静電的相互作用が協同的に寄与することを明らかにした。 3.銅(II)ーbpyープテリンー6ーカルボン酸(PC)錯体へのイミダゾ-ル(im)の配位 pH滴定法と各種スペクトル法により四元錯体Cu(bpy)(PC)(im)の生成を明らかにし、安定度定数を決定した。今後,imの代りにアミン,アミノ酸を用いた四元系を解析し,さらにPCの代りにテトラヒドロプテリンを用いて銅(II)触媒のアミノ酸芳香環ヒドロキシル化反応を行う。
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