研究概要 |
本研究は、補酵素を必要とする金属酵素反応中間体と考えられる金属ー酵素タンパク質ー補酵素ー基質錯体をモデル化した四元錯体および核酸一薬物会合体モデルについて、構造と安定度、反応性を明らかにし、錯体分子内の配位子間相互作用についてその様式ならびにこれによる錯体の安定化を解明することを目的とした。 1.2,2′ービピリジン(bpy)とLーチロシン(LーTyr)を含む銅(II)錯体[Cu(bpy)(LーTyr)ClO_4]・2H_2OのX線結晶構造解析を行なって、錯体分子内でbpy環とTyrフェノ-ル環との間でのスタッキング相互作用があることを明らかにした。また、LーTyrの代りにインド-ル環を有するLートリプトファン(LーTrp)を用いて[Cu(bpy)(LーTrp)ClO_4]を合成し、構造解析を行なったところ、bpy環とTrpインド-ル環との間のスタッキングが判明した。 2.[Pt(L)(en)](L=phen,bpyなど;en=エチレンジアミン)とのモノヌクレオチド(NMP=AMP、GMP)との水溶液中での会合体形成について、Lとしてphen、bpy、3,4,7,8ーテトラメチルー1,10ーフェナントロリンMe_4phenなどを用い、AMP、GMP、CMPとの会合体形成をスペクトル法によって追究した。この結果、NMP=AMP、GMPについては疎水場面積の大きい[Pt(Me_4phen)(en)]との会合体の安定度が高いことが判明した。 3.プテリンー6ーカルボン酸(PC)を補酵素、bpyを酵素結合部位とする銅含有フェニルアラニンヒドロキシラ-ゼ活性中心モデルを構築し、このモデル錯体と他分子(基質モデルなど)との四元錯体形成を溶液平衡の詳細な解析により明らかにした。プテリン補酵素モデルとしてテトラヒドロプテリン誘導体を用い、Cu(bpy)^<2+>との酸化還元反応を各種スペクトル法、クロマトグラフィ-などにより調べ、プテリンの酸化体ジヒドロプテリンが生成することおよび酸素が吸収されることを明らかにした。
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