研究概要 |
1.新錯体の合成:(1)[Cr_2(RO)_2(acac)_2]錯体(acac=acetylacetonato)でフェノキソ(R=ph)およびそのパラ置換体(R=Xーph:X=Me,NO_2,NH_2,Cl)とヒドロキソ(R=H)錯体の6つの新錯体を合成した。 (2)異なったchromophoreをもつ異核複核錯体[(NーN)_2M(OH)_2Cr(nta)]^+((NーN)=(NH_3)_2,ethylenediamine,R,Rーcyclohexanediamine;nta=nitrilotriacetato;M=Cr^<III>,Co^<III>)の系統的な合成法を確立した。 (3)新しい酒石酸架橋複核錯体、[Cr_2(Lーtart_2H)(acac)_2]^<3->や[Mn^<II>_2(Lーtart_2H)(bpy)_2]^<3->の合成に成功した。 2.ヒドロキソおよびオキソ架橋複核錯体[{Cr(NーN)_2}_2(μーX)(μーY)^<n+>,[{Cr(N)_5}_2(μーZ)^<m+>型(I__ーX=Y=OH^-,n=4;<II>___ー X=O^<2->,Y=OH^-,n=3;<III>___ー X=Y=O^<2->,n=2;<IV>___ー Z=O^<2->,m=2)(NーN=bpy,phen,en,(N)_5=2(NーN)+(NCS^-):bpy=2,2ーbipyridine;phen=1,10ーphenanthroline)のスピン禁制遷移領域における円二色性(CD)、磁気円二色性(MCD)とリン光を比較検討した結果、CrーO架橋部のπdonor性はdi(μーOH)錯体(I__ー)<(μーO)錯体(<II>___ー,<III>___ー,<IV>___ー)の順に交換相互作用定数(J値)と対応して大きくなり、CrーOとCrーNのπ結合性にはかなりの電子的協同効果があることがわかった。 3.X線構造解析:1.(1)錯体のX線解析によって、複核構造を確認した。酒石酸架橋H[Cr_2(Lーtart_2H)(bpy)_2]・3.5H_2O錯体の構造解析によって、架橋部の強い水素結合の存在が認められたことから、大きなJ値が期待される。 4.NMRスペクトル:1.(1)錯体のacacのCH_3基の^1HNMRが観測され、XーphOのXの違いによるケミカルシフトの差が見られた。また^2H化bpyとtrienやen錯体の^2Hーや^<14>NーNMRシフトとAOMパラメ-タ-に相関関係が見いだされた。 5.磁化率:1.の新錯体と2.の<IV>___ー錯体や3.の酒石酸錯体の室温の磁化率は複核構造を示している。さらに温度可変磁化率測定装置(試運転中)でJ値を求めて、CD,MCD,NMRと比較検討して、架橋部の配位結合性を検討する。
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