研究概要 |
本研究ではフタロシアニン金属錯体を部分酸化して,電導性を引き出すのを目標としているが,以下の三つのテ-マに分けて研究を進めた。 (1)液晶性電導体:フタロシアニン金属錯体(M=H_2,Cu,Zn)に8個の長鎖アルコキシ(OC_<10>H_<21>,OC_<12>H_<25>)を導入してディスコティックカラム液晶を合成した。これらの錯体はDSC測定より90〜100℃で液晶相へ転移する事が認められた。電導性を付与するために,NOBF_4又はジシアノジクロロキノン(DDQ)による部分酸化を試みた。これらの錯体は青色であるが,部分酸化により赤紫色に変わりUVーVIS及びESR測定より中心金属ではなくフタロシアニン環が酸化される事が分った。酸化剤の添加量を10%以下に抑さえると固相から液晶相への転移が認められた。電導度の温度変化より,固相液相ともに半導体的性質を示し,液晶相へ入ると温度勾配が急になる結果が得られた。 (2)二次元的要素を含む積層形成:本目的を推行させるために,まずサブフタロシアニン(SubPcB)を合成した。平面二環型フタロシアニン(SubPcBより合成)が可溶になるよう,SubPcBに種々の置換基の導入を試みた。今後,これらの誘導体を用いて二環型フタロシアニンの合成を行う。 (3)積層フタロシアニン錯体の電導性に及ぼす置換基の影響:本目的の基礎的デ-タを得るため,種々の置換基を有するフタロシアニン金属錯体(Fe,Co,Ni,Cu,Zn)を合成し,CV測定より酸化還元電位を求め,NOBF_4,DDQ等による化学的酸化と比較した。電子供与性置換基は環の酸化を促進し,またCo(II),Zn(II)錯体は他の錯体より酸化されやすい事が分った。この違いは化学的酸化において,Co(II)とZn(II)錯体のみが比較的酸化力の弱い酸化剤DDQにより酸化される結果を示持する。UVーVIS及びESR測定よりこれらの錯体の第一酸化はまずフタロシアニン環上で起こる事が分った。
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