研究概要 |
本年度には3種類の実験を行った。まず、 ^<97>Mo濃縮同位体(92.8%)を13MeVの重陽子で照射して(α,n)反応によって ^<98>Tc原子を約10^<13>個製造した。その際に、タ-ゲット中に含まれる他のMo同位体から ^<100>Mo(α,p) ^<101>Mo ^<98>Mo(α,α) ^<96>Nbなどの励起関数を重陽子エネルギ-3〜13MeVの範囲で求めることができた。しかし、半減期61日の ^<95m>Tcが同時に生成し、その放射能が ^<98>Tcのそれにくらべて非常に大きいために、2年間ぐらい冷却しないと ^<98>Tcの測定ができないことがわかった。 次に、 ^<95>Tc濃縮同位体をα線照射して、(α,2n)反応によって ^<97>Ruを製造した。この実験では、照射後1日以内にRuをMo,Tcから分離精製する化学操作を行い、 ^<97>Ruのγ線分光を先ず行った。そのあと、 ^<97>Ruから ^<97>Tcが十分に生成するのを待って、 ^<97>Ru→ ^<97m>Tcの分岐比を求めるとともに、 ^<97m>Tc及び ^<97>Tcの壊変に伴って放射されるTcとMoのKーX線を測定する予定にしている。この試料では、半減期90日の ^<97m>Tcが十分に崩壊しないと ^<97>Tcを測定できないので、矢張り2年ぐらいの冷却期間が必要となる。 第3の実験として、原子核分裂から製造された ^<99>Tc線源を購入し、その中に含まれている ^<98>Tcのγ線測定を試みた。市販の線源をGe半導体検出器で測定した結果、 ^<98>Tcのγ線として報告されている745.4keVと652.4keVのγ線を検出した。半減期として文献値を用いると, ^<99>Tc線源中に含まれる ^<98>Tcの量は原子数比で10^<-9>〜10^<-10>であることがわかった。この実験はまだ継続中であり、 ^<98>TcがEC壊変するかどうかを精度の良いγ線分光で確かめている。 その他、本年度中に、Tcの質量分析法について検討した。 ^<97>Tc, ^<98>Tcの半減期を正しく求めるには,放射能測定とともに原子数を決める必要がある。結論として、表面電離型イオン源でTc^+イオンを作るのは困難であるが、ICPーMASSを使えば、10^<12>個程度のTc原子数を決定できそうである。
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