研究概要 |
硫化鉱物の拡散に関する本研究は次の二つの目的,A)トレ-サ-法およびイオンマイクロプロ-ブ(SIMS)による硫化鉱物(閃亜鉛鉱,黄鉄鉱,黄銅鉱,硫砒鉄鉱)中の鉄,硫黄の拡散定数を求め,B)天然の鉱石中に認められる種種の組織を元素の拡散性から考察,から成っている. 本年度は,シリカガラス法により閃亜鉛鉱中の硫黄ー34の500℃以下における加熱拡散実験を行なった.測定は筑波大学のイオンマイクロプロ-ブ分析を行なった.拡散実験前および実験後の硫化鉱物の結晶表面を細部にわたり観察記載した.それに当たっては,本年度の備品費で購入した反射型偏光顕微鏡を用いた.鉱物表面から1マイクロミロン程度しか入りこんでいない拡散プロファイルを分析するのに必要なイオンビ-ムによるクレ-タ-の深度計測は,購入した微分干渉装置で行なった.閃亜鉛鉱中の鉄および硫黄の拡散定数を測定,拡散の活性化エネルギ-算出した.求めた拡散デ-タを鉱物結晶化学的に検討を進めている.同論文を投稿準備中である. 一方,天然の鉱床,特に黒鉱鉱床の鉱石中に認められる種種の組織解析を行ないつつある,東北地方に分布する黒鉱鉱床および接触交代鉱床の地質調査およびサンプリングを行なった.更に試料を鏡下で観察,鉱石組織の形成とその変化の解析を行っている.組織の検討は,本年度の備品費で購入した顕微鏡ビデオカメラ装置およびビデオレコ-ダ-により検討,同デ-タの処理をあらたに購入したパソコンにより進めている,松峰黒鉱鉱床産の重晶石及び硫化鉱物の鉱石組織や鉱石内での組成ゾ-ニングの形成速度の検討を進め,論文として印刷中である. さらに,硫化鉱物の組成ゾ-ニング,粒子サイズ等より拡散の凍結温度および冷却速度を求め,鉱床の冷却史を中心に論文にまとめつつある.
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