Yamatoー82162隕石中の各種岩片を識別・分類し、その構成鉱物の化学組成を解析し、各岩片の成因的相互関係を明らかにした。即ち、フィロ珪酸塩岩片とマトリックス様岩片は隕石母天体における加水反応によって形成されたが母天体の表層又は内部における温度分布に差があり、加水反応の程度は様々であった。一方、異常岩片は世界で始めて発見されたもので、主にペリクレイスと炭酸塩鉱物より成り、この岩片中にはCaO・FeSの化学組成をもつ新鉱物が発見された。熱力学的考察により、この異常岩片は炭酸塩鉱物が急激に加熱されたために脱炭酸ガス反応が起こり、その後、冷却により再び炭酸塩鉱物が岩片中に生じた事により形成された。また、無水コンドライト岩片は隕石母天体の表層に激突してきた入射物質であり、他の岩片とは成因的関係を持たない事が分かった。以上の様に、Yamatoー82162隕石の生成環境はかなり複雑な諸過程により形成された事が判明した。また、Belgicaー7904隕石より構成物を分離し、それぞれを二分して、一方をシカゴ大学に送り酸素同位体組成を測定した。他方は岩石薄片にして構成鉱物の化学組成の解析に使用した。オリビン結晶片の酸素同位体組成はコンドリュ-ル混合線に乗り、新鮮なコンドリュ-ルの酸素同位体組成を代表する事が分かった。コンドリュ-ルと包有物とマトリックスの酸素同位体組成は、包有物・マトリックス混合線上に乗る事が判明した。これは、このコンドリュ-ルが含水鉱物よりなるマントル層を持ち、その加水反応のため、含水鉱物よりなるマトリックスの酸素同位体組成に近ずいた事を表している。包有物は完全に含水鉱物よりなり、その酸素同位体はマトリックスと上記のコンドリュ-ルとの中間であった。この事は、包有物が原始太陽系星雲での加水反応で形成され、マトリックスは母天体での加水反応で形成された可能性を示している。
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