Belgicaー7904隕石は、非平衡炭素質コンドライトであり、主に、コンドリュ-ルとマトリックスより成る。コンドリュ-ルは種種の程度に加水反応を受けて含水鉱物が形成されている。加水反応の程度が弱いコンドリュ-ルの場合、コンドリュ-ルの周縁部のみに含水鉱物が形成されている。この含水鉱物の産状から、コンドリュ-ル中の輝石と斜長石(又は石基ガラス)とが反応してタルク成分に富む含水鉱物が形成されており、オリビンはほとんど反応していない事が分かった。また、加水反応を強く受けたコンドリュ-ルでは、輝石や斜長石以外にオリビンまでもが反応して蛇紋石成分に富む含水鉱関が形成されている。熱力学を用いてこれらの反応を検討した結果、以下のことが判明した。コンドリュ-ルが酸化的な星雲ガスと高温(560ー330K)で反応して、タルク成分に富む含水鉱物が形成され、300Kでは、オリビンが反応して、蛇紋石成分に富む含水鉱物が形成された。さらに、マトリックスは、冷却した星雲ガスが300ー250Kの温度で反応して含水鉱物を形成した結果であった。 いままでは、炭素質コンドライトの含水鉱物は、無水鉱物が母天体に集積した後、そこで加水反応をうけて形成されたと考えられていた。しかし、本研究により、コンドリュ-ルは、原始太陽系星雲中で酸化的なガスと反応し含水鉱物が形成された後、集積して母天体が形成された事が判明した。この考えはBelgicaー7904隕石のみならず、多くの他の炭素質コンドライトにも当てはまるものであり、従来の説を覆すことになった。
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