研究概要 |
本研究では、南極より発見された約1万個の隕石のうち、特異な炭素質コンドライト隕石3つ(Yamato-82162,Yamato-86720,Belgica-7904)を対象として研究を行い、その特異性を明らかにすると共に、その生成環境を推論した。炭素質コンドライト隕石は、従来、6つのグループ(CI、CM、CO、CV、CR、CK)に分類されていたが、本研究の3つの特異隕石はそのいづずれのグループにも属さないため、新たにCYグループとすることを提唱した。 このCYグループの隕石は、含水鉱物を多く含むためCIグループやCMグループの隕石に類似するが、酸素同位体や含水鉱物の化学組成が全く異なっており、特異な環境で生成したことが判明した。CYグループの隕石には、マグネタイトやウスタイトが鉄金属と共存しているため、隕石形成時の酸素分圧はかなり高く、太陽系元素存在度のガスより水素が百分の1程度に欠乏した酸化的なガスから形成されたことが明らかになった。そのため、そのガスの水蒸気分圧はかなり高くなり、星雲中で加水反応が起きて含水鉱物を形成したことが分かった。その際、コンドリュール中のガラスや輝石や斜長石が反応してアルカリを含むタルク質の含水鉱物が形成され、その後、オリビンが反応して蛇紋石質の含水鉱物が形成された。これらの含水鉱物の形成条件は熱力学データを用いて解析され、その温度は600Kから300Kであった。 また、CYグループは、CIグループとCMグループの中間的な環境で生成したことが分かった。CMグループは星雲ガスより初期に分離して主にその母天体で加水反応してできたものであるのに対し、CYグループは主に星雲ガスと長期に共存してそのガスにより加水反応を受けた。CIグループは星雲ガスにより加水反応を受けた後に母天体で更に加水反応を受けたため、CYグループより複雑な形成環境であったことが示された。
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